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毎年恒例! 年末の全職員集合!!

2015年12月31日 19:00

アウローラ「(日本酒の杯を手に)え~、2015年も、こうして皆で無事に年末を迎えることができました。
 何はともあれ……アストライアさん、謎の老人氏、お帰りなさいッ! かんぱぁ~い!!」

全員「かんぱ~い!!」


 グラスをぶつけ合う音。歓談のざわめき。


ヘリオス「ったく、今年の年始早々から、ジジイがまったく『帰って』こねーもんだから、もう死んだんじゃねーかと心配したぜ!」

謎の老人「失礼じゃのう。庭の王国の時空を、じっくり踏査しておったんじゃ!」

アストライア「とても素敵なところでしたわ。あなたも来ればよろしかったのに」

ヘリオス「オレまで跳躍したら、ターミナルのエンジニアがいなくなっちまうじゃねーかよ!」

ボレアル「それに、ヘリオスさんは、アウローラさんが山に登るときの『お目付け役』でもありますもんね」

アウローラ「確かに! ジェイ先輩やヘリオスくんがいなかったら、わたくしはたぶん暴走して山中をさまよう破目に……」

ヘリオス「方向・方角の分からねー奴の一人登山は厳禁だ!」

ボレアル「……あれ? そういえば、アウローラさんもヘリオスさんも、後半、あんまり山に登ってませんでしたよね?
 アウローラさんが9月に生駒山に登った記事がラストじゃないですか?」

アウローラ「あ~……実は、ジェイ先輩が、ちょっと足を傷めておられましてね~。
 治るまで、山登りの計画がストップしてるんですよ」

ヘリオス「はやく治るといいよな!」

謎の老人「ところで、ワシらが庭の王国に行っておるあいだ、お前はギンコさんと一緒に、本物の庭でちゃんと活動しておったのか?」

ヘリオス「当たり前だろ。こないだも、萩やらリュウキュウアサガオやらを株元でバッサリ剪定して、腐葉土をかぶせておいたぜ!
 あと、ちょっと存在を忘れてた球根を慌てて植えつけたりとか」

ボレアル「大丈夫なんでしょうか……それ……(汗)」

ヘリオス「さあな。ま、いけるんじゃねえの? 軒先にぶら下がったまま、芽が出てたし……」

ボレアル「………………。」

アストライア「――話は変わりますけれど、アウローラさん、あたくしたちがいない間に、外部サイトへの展示ということを始めてみたのですって?」

アウローラ「あっ、実は、そうなんですよ~。
 時空跳躍ゲートへの物語の展示って、けっこう手間がかかるんですよね……。
 それで、何か簡単に、多くの方に物語の時空を訪れていただける方法はないか? ということで、新システムを導入してみました」

アストライア「それは良いことだわ。観測者がいなければ、その時空は存在しないのと同じことになってしまいますもの。
 多くの方に物語の時空を訪れていただけるように工夫するのは必要なことね」

アウローラ「もちろん、時空跳躍ゲートのほうも、しっかり運営していきますよ!
 今も、アストライアさんと老人氏の旅の顛末を『庭の王国への旅』という新しい時空として、ゲートを開通させるために、タグ打ちの作業を地味にがんばってるところですから(笑)」

ヘリオス「けっこう面倒なんだよな……あの作業……
 一度、外部サイトを使っちまうと、展示のための作業の簡便さに慣れちまうからなぁ……」

アウローラ「まあ、そうですけど、個人サイトという形も、伝統文化的な感じで続けていきたいと思います☆」

ヘリオス「伝統なのか!?」

ボレアル「ツイッターとかもやりませんもんね、アウローラさん」

アウローラ「わたくしがどれだけ『中毒性』の高い人間か知っていれば、その決断もあながち間違いだとは思えないことでしょう……(笑)」

謎の老人「まあ……一度凝ったことは、延々とやり続けるからのう、アウローラくんは……(汗)」

アウローラ「物語の同志の方とツイッターでつながっちゃったりしたら、絶えずレスポンスしたいことだらけになってしまって、そうこうしてるあいだに物語を確定する時間がなくなりそうな気が!」

ボレアル「有り得ますね!!」

アウローラ「ということで、まだしばらくのあいだは、ノーツイッター主義を貫こうと思う今日この頃でした」

アストライア「自分の理想とするスピード感に合わせて、使うツールを選ぶというわけですわね。
 それがよろしいでしょう。ツールに縛られて、疲弊してしまったのでは、真の自由とは言えませんもの。真の自由とは、自分がいいと思えるものを、自分で選ぶことができる状態のことだわ」

アウローラ「まっ、そういうことで!
 アストライアさんと老人氏の活躍によって、今年も、ひとつの物語を完結させるという目標が果たされたことですし……
 来年こそ『オーダーオフィス101』と『スパルティアタイ』を進展させ、どちらかは完結させましょう!!」

ボレアル「おおっ! ……って、それ、去年の年末に言ってませんでしたっけ!?」

アウローラ「しーっ、しーっ! 言わなければ分かりませんよ☆」

ヘリオス「そーか!?」

アウローラ「期せずして、男同士の愛の世界が揃い踏み……(汗)
 がんばりましょう!!

ヘリオス「何をだッ!?」

アストライア「ほほほ。まあ、ともあれ、今はゆっくりと頭を休めて、美味しいものを食べて、飲みましょう」

ボレアル「アストライアさん……旅をして、なんか変わりましたね!」

アストライア「あら、そうかしら? 旅は、人を成長させるといいますものね。
 物語を語り、読むという事は、その世界を旅することと同じ。
 来年からも、いろいろな時空に旅に出たいものだわ」

アウローラ「お客様方と共にね!
 (姿勢を正して) ――というわけで、今年一年、ターミナルに遊びに来て下さった皆さま!
 そして、こちらをご覧になっているかは分かりませんが、外部サイトでお世話になりました皆さま!
 本当に、ありがとうございました~っ!!(拝)

全員「2016年も『時空跳躍ターミナル』を、よろしくお願いいたします!!(拝)」


 歓談のざわめき。
 BGMにラヴェルの『ボレロ』が流れている――

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庭の王国への旅 45

2015年12月30日 11:27


     *     *     *     *

        *     *     *     *

     *     *     *     *


 星の娘は、ゆっくりと両目を開いた。

 横たわった自分を包み込む透明なキャノピー越しに、照明の消えた天井が見えた。

 彼女が身を起こすと同時、その動きを感知して滑るようにキャノピーが開き、部屋が明るくなった。

 ひどく寝坊した朝のように頭が重かったが、他にはどこにも不調を感じることはなかった。

 時空跳躍ゲートと呼ばれるその空間には、彼女が今まで入っていたのと同じ、繭のような形状の跳躍用のカプセルがいくつも並んでいた。

 そのうちのひとつが開き、老人が静かに起き上がった。

 二人はしばらく、大作映画を観終えた観客がするように、無言で座り、顔を見合わせ、それまでの経験を噛みしめあった。

 やがて、老人はゆっくりとカプセルのふちから身を乗り出し、モニターに示された数字を確認した。

「三百五十九日と、二十時間、四十四分。――地上の時の流れではな。」

「まあ……」

 星の娘は銀色の髪に指を差し入れ、こめかみを軽く押し、首を左右に傾け、ゆっくりとカプセルの壁を押し、その部分を開いて床に降り立った。

 それから、急に振り返ってカプセルのふちに両手をつき、中を覗き込んだ。

「あった!」

 彼女が取り上げたのは、色とりどりの細長い布を束ねたものだった。

 彼女はそれを胸に押し当て、手放したら消えてなくなるのではないかと疑うように、しげしげと見た。

「あたくし……本当に持ってくることができるなんて、思っていませんでしたわ。
『はてしない物語』のバスチアンでさえも、生命の水を持ち帰ることはできなかったのに。」

「いいや。彼は、生命の水を持ち帰ることができた。そうじゃろう?」

「ああ……そう、確かに、そうでしたわね。」

 星の娘は、ちょっと笑って、またこめかみを押した。

「あたくし、まだ少し、頭がぼんやりしているようですわ。
 ――おじいさまは、ちゃんと、あれをお持ち?」

 問いかけに応えて、老人はふところから、青紫色の小さな缶を取り出した。

 振ると、かさかさと小さく乾いた音がした。

「あれほど何度も、水に浸かったわりには、見事な保存状態。」

「本当に。きっと、砂漠の魔女さんの力ですわね。」

 自分たちだけに通じる会話でくすくすと笑った星の娘は、うんと背中を逸らし、大きく肩を回した。

「三百五十九日ですって! それほど長かったなんて。
 ――いいえ、本当は、もっと長くいたような気がするけれど。
 あたくしたち、危うく、地上の丸一年もこちらを留守にするところだったのね。
 アウローラさん、元気にしているのかしら?」

「行こう。」

 老人も床に降り、腰をとんとんと叩きながら言った。

「彼女はきっと、待ちくたびれておるよ。」



 ふたりがほとんど一年ぶりに執務室に入っていったとき、その部屋は薄暗く、しんとしていた。

 だが、黒髪の娘は、そこにいた。

 執務机のライトだけを灯し、こちらに背を向けて、いつものように頬杖をつき、灰色の椅子の上に足を組んで座っていた。

 彼女の前にはいくつものディスプレイが並んでいたが、今、そのどれにも光は灯っておらず、彼女はぼんやりと宙を見つめながら、手にしたティーカップをゆっくりと回して、中身を揺らしていた。

 執務机の上には、何冊かの書物が無造作に置かれていた。

 トゥキュディデス著、藤縄謙三訳『歴史』、アーシュラ・ル=グウィン作、清水真砂子訳『さいはての島へ』、トルーマン・カポーティ作、村上春樹訳『ティファニーで朝食を』――

 星の娘と老人は黙ったまま顔を見合わせ、しばらく視線と表情だけでやりとりをした末、老人が一歩、進み出て、咳ばらいをした。

「うわ。」

 と黒髪の娘は言い、カップの中身をこぼしそうになりながら振り返って、立ち上がった。

「あ、二人とも、おかえりなさい。」

「ええ。」

 星の娘は、複雑な表情で言った。

 一年近くも、大いなる旅のために留守にしていたというのに、このような出迎えは、ひどく軽々しいものに思えたからだ。

「アウローラさん、お元気にしていらした?
 あたくしたち、ずいぶん長く、こちらを空けてしまいましたわね。」

「ええ、いや、なに。大丈夫ですよ。こっちには、ボレアルくんやヘリオスくんもいましたし。
 あ、ちょうど今、休憩にお茶を飲んでいて、フォーチュンカップのことを考えていたんですよ。
 紅茶占いの。買おうかどうしようかってね。
 知りませんか? 昔、流行ったんですよ、だいぶ昔にですけど。」

 黒髪の娘は、そこまで一気に喋ってから、じっと二人を見つめた。

 そして、もう一度、

「おかえりなさい。」

 と言った。

「ええ。」

 星の娘は、微笑んだ。

「素晴らしい旅だったわ。アウローラさんが昔、見た景色を、あたくしたちも見てきたの。」

「とても、きれいなところだったでしょう?」

「ええ、本当に。――最高の空だった。」

 星の娘が差し出した色とりどりの布の切れ端を、黒髪の娘は受け取り、まるでそこに物語が書き記されているとでもいうかのように、じっと見つめた。

 次に顔を上げたとき、彼女は懐かしそうに笑っていた。

「隊長、元気にしてるみたいですね。」

「もちろんじゃ。それに、他の人たちにも会ったぞ。」

 老人が進み出て、青紫色の小さな缶を差し出した。

 黒髪の娘は、目を見開いて動きを止め、それから、そっとその小箱を受け取って、開いた。

「ああ――」

 黒髪の娘はそう呟き、長いこと黙っていた。

 泣き出すふうでもなく、笑うわけでもなく、ただじっと砂糖漬けのボリジの花を見つめるその目には、過去が海のように満ち、あの空が映っていた。

「お茶を、」

 と、やがて、缶の蓋を閉じ、黒髪の娘は言った。

「もう一度、お茶を淹れましょう。一番、上等なやつを。
 あのひとが淹れてくれるお茶の味には、かなわないにしてもね。」

「ええ、そして、その席で、あたくしたちの旅の話をすっかり聞かせてさしあげるわ。」

 星の娘は笑って、身をひるがえした。

「あたくし、沸かしたてのお湯を持ってきますわ。茶葉とティーセットの用意をお願いしますわね。」

「では、わしはヘリオスと、ボレアルくんを呼んでこよう。」

 老人も、急いで部屋を出ていった。

 遠くから「おうい、帰ったぞ。」と叫ぶ声と、それに応じるにぎやかな声が聞こえてきた。


 ひとり残された黒髪の娘は、色とりどりの布の切れ端をあらためて取り上げ、つくづくと眺め、

「そう、覚えていますよ。――最高の空だった。」

 強く胸に押し当てたそれを、そっと、机の引き出しにしまった。




 そして物語と歌は終わることなく、世の果てた後までも、永遠に響き続ける――





    【庭の王国への旅 完結】

庭の王国への旅 44

2015年12月29日 10:54

       *       *       *       *


 ごうっと音がして、星の娘の美しい銀色の髪は旗のようになびいた。
 
 強い風が吹いている。
 
 星の娘は、急に明るいところに出たために半分ばかり下ろしていたまぶたをそっと開いた。
 
 そして、見た――
 
 自分が、完璧に青い空の下の、美しい庭園の真ん中に立っているのを。


 樹木のたぐいは一本もなく、足元は一面の草と、色とりどりの小さな花々と、強風に耐える丈の低い植物のしげみにおおわれていた。

 そして、その中を、砂色の石で敷かれたまっすぐな細い道が、秘密に満ちた図形のように縦横に通っていた。

 これほど風が強いにも関わらず、草花はみずみずしく、ひとつの瑕もなかった。

 庭園の形は正六角形で、それぞれの辺が三十歩ほどの長さしかながった。

 そして、周囲には、同じように空中に浮かぶ小島のような庭たちが点在していた。

「天空の庭……」

 そう呟く声が聞こえ、星の娘は振り返った。

 そこに老人が立ち、子供のような表情であたりを見回していた。

 彼女たちが立っている六角形の庭園は、明るい砂色の石でできた短い橋で、隣の庭園とつながっていた。

 そこにも丈の短い植物がしげり、白い石でつくられた大きな噴水があって、絶え間なく水を噴き上げていた。


 星の娘と老人は、手すりのない橋を渡っていった。

 橋の下には、何もなく、ただ風だけが吹きぬけていた。

 いや、気が遠くなりそうなほど下に、一面の、真っ白な板のようなものが見えた。

 それは、雲海なのだった。

 見回す周囲のぐるりは、すべて青空だった。

 ここは、雲よりも遥かに高く、視界をさえぎるものは何一つなく、空の青は、その底に深い深い藍色と、宇宙の黒を感じさせる色合いだった。

 強い風は決して途絶えることなく、さまざまな方向から吹き付けて、星の娘の髪と、老人の衣を激しく吹きなびかせた。

 その絶え間ない風音の向こうから、何か、音楽がきこえるような気がした。

 その音色は、命の海の中できこえていた音よりも、もっと明るく、きらめくような、華やかな音だった。

 星の娘は目を閉じ、両腕を広げて、全身で風を受け止め、その音を聴いた。

 涙が出てきた。

 その音は、あまりにも雄大で優しく、美しく、きっとここの他では決して聴くことができないのだという気がした。

 それは、物語の世界がうたっている歌だった。

 その歌は決してやむことはなく、聴く者がいようといまいと、永遠に、この風の中で、高らかに響き続けるのだ。

「ひとたび、お別れする時がきましたね。」

 女王の声がきこえた。

 星の娘と老人が振り返ると、みずみずしい芝生の上に、金の王冠をかぶった女王が立って、微笑んでいた。

「あの子の旅立ちの日にも、私は、この王冠をかぶっていたの。
 あの子に伝えてほしいわ。私たちは今も、変わらずにここにいると。」

 激しい風に、女王の青い髪は旗のようになびき、その衣は軽やかな羽ばたきの音をたてた。

「ええ、必ず。」

 星の娘は、深く膝を曲げて、女王に礼をした。

「あたくしたち、何ひとつ落とさずに、アウローラさんに伝えますわ。
 あなたのことも、この国の景色のことも、この国の人々のことも――」

「いつでも、帰ってきていいんですよ!」

 いつの間にか、女王のうしろに仮面の男が立って、両手をもみしぼり、泣きそうな顔でこちらを見ていた。

「ありがとう。」

 老人が言って、深々と頭を下げた。

「必ず、戻ります。地上での、わしらの時が尽きる時には。」

「あら!」

 星の娘は叫び、遠くを指さした。

「あれは、何?」

 四人は同じ方向を向き、青空の彼方に目を凝らした。

 それははじめ、洗われたような青を背景に、ただの黒い点のようにしか見えなかった。

 それから、星の娘は、蛇か、龍の子供が空を飛んでいるのではないかといぶかった。

 それは何か細長いもので、何もない空中をうねり、くるりくるりと宙返りをしながら、庭園に立つ四人のほうへと近付いてきた――

「風祭の布だわ!」

 星の娘は突然飛び上がり、手を打って叫んだ。

「ほら、あの布よ! エレクトラさんたちが、槍につけていらした、色とりどりの!
 風祭の終わりに、東風にのせて飛ばした、あの布だわ!」

 その布は、いまや端切れの一枚一枚がはためく様が見てとれるほど近くまで来ていた。

 そして、その布を手でつかんでいるのは、つむじ風をまとった透明な子供のような、不思議なものだった。

「あれは、大嵐ッ子ですな。」

 仮面の男が言った。

「一の女王陛下は、何かの物語からとって、バンダースナッチと呼んでおりましたよ。
 あの者は気まぐれに大風を吹かせるので、翼の騎士団とは仲が悪いのですがね。
 ところが、女王陛下が旅立たれる日、あの者は、翼を背負った隊長を助けて、この庭まで吹き上げ――」

「つかまえて、つかまえて!」

 星の娘が叫び、全員が子供のように飛び跳ねて布を掴もうとした。

 大嵐ッ子は声をたてて笑い、くるくると回って四人をからかった後、星の娘に飛びついて、その手の中に布を押しこんだ。

 そして、笑いながら庭園の花々を吹き散らし、吹き抜けて、行ってしまった。

「これは、きっとエレクトラさんの布だわ。」

 星の娘は、布をしっかりと握りしめながら、乱れ、もつれた髪を払いのけた。

「そんな気がするの。
 あの、大嵐ッ子という子供のこと、ここへ来る途中の、物語の壁に彫ってありましたわ。
 今日は、エレクトラさんは来られないから、かわりに、この布をここへ届けてくれたのね。」

「ぜひ、お持ちなさい。この国の思い出に。」

「はい!」

 女王のすすめに、星の娘は笑顔で答え、庭園のふちに、まっすぐに立った。

 帰るには、どうすればいいか、彼女たちは黒髪の娘から聞いて知っていた。

 彼女が旅立ったときと、同じ道――

 この庭園から、宙へ飛び出し、空の中の道を通って帰るのだ。

 老人が、星の娘のとなりに立った。

 遥か下の雲海まで、何もない空中が広がっていたが、足が震えることはなかった。


 まるで、夢の中にいるときのような感じだった。

 夢の中で、ああ、これは夢だ、と気付いたときのような――

「あたくし、決して、忘れませんわ。」

 星の娘はそう言い、息を吸い込んで、地面を蹴った。

 老人も同時に飛び出したか、それとも遅れたか、彼女には分からなかった。


 青い空の中を、真っ逆さまに落ちていく。

 耳元で風がうなり、握りしめた布が、手の中でばたばたと羽ばたきの音を立てた――




庭の王国への道45へと続く

庭の王国への旅 43

2015年12月27日 19:15

    *      *     *     *


 ふたりは二の女王のあとに続き、大温室を出て、長い螺旋階段を降りていった。

 仮面の男がそのあとから続いた。

 がらんとした明るい広間や、ゆるやかに曲がる廊下を通り抜け、いくつもの階段をくだり、一同は進んでいった。

 そのあいだ、誰も、何も喋らなかった。


 やがて、外の光をとりいれていたたくさんの窓がなくなり、金色のランプの灯りがゆらめく薄暗い廊下となり、そのランプも少しずつまばらになっていった。
 
 いつしか一同は、黒い石を掘り抜いてつくられた暗いトンネルの中を、一列に並んで歩いていた。
 
 トンネルの壁と天井とは、ひとつづきのアーチになっていて、手を伸ばせば両側の壁にも、天井にも触れることができるほどの広さしかなかった。

 壁には一定の間隔で小さな窪みが掘られていて、そこに一本、あるいは数本のろうそくが灯され、辛うじて足元を照らしてくれていた。

 その灯りが床に反射して、濡れたような光を放っていた――いや、いつの間にか、床は実際に濡れていた。

 果てがないように思えるほど、長く歩くあいだに、空気には少しずつ湿り気が増し、気のせいだろうか、重さすら感じるようになってきた。

 星の娘と老人は、どちらも何も言わず、まっすぐに歩く女王の背に続いて歩き続けた。


 やがて、踏み出した一歩の音が不意に大きく反響した。

 一同は、がらんとした地下のドームのような場所にいた。

 入口の両脇の窪みに、それぞれ一本ずつ灯された蝋燭のほかに灯りはなく、天井は闇に消えて、どこまで高さがあるのかは全く分からなかった。

 濡れた石の床の中央には、腰の高さほどの円形の石組みがあり、そこには満々と水が湛えられていた。

 不意に、どことも知れぬ上方から、一滴の雫が落ちてきて、水面を叩いた。

 高い、澄んだ音が壁に幾重にも反響し、いくつものこだまとなって再び上方へと昇っていき、消えた。

「あなたがたは、この城に入るとき、」と女王が言った。「水の中を通ってきましたね。今度もまた、水の中を通っていくのです。」

「まあ。」

 星の娘は、嫌な予感はしていたがやはりそうだった、という調子で言った。

「あたくし、――ええ、もし、どうしてもその必要があるというのなら、行きますわ。
 でも、あたくし、正直に申し上げて、もう二度とあのひとには会いたくありませんわ!」

「あのひと?」

「あの、横柄な、蒼白い顔をした、――夜の王。」

 星の娘は、小さな声で言った。

 こんな暗い場所でその名を口にするのは、適切なこととは思えなかったのだ。

 女王は微笑んだ。

「あなたが愛する、星や、月や、太陽の光があるならば、その反対側には、闇もまたあるのです。
 でも、心配することはありません。この先は、彼の領域ではない。
 彼が治めるのは、地下の黄泉の国。この先は、黄泉の国にはつながっていませんから。」

「それなら、安心ですわね。」

 星の娘は言ったが、暗い水面を用心深く見つめる目つきは、ことばほどには安心していなかった。

「でも、きっと、とても冷たいのでしょうね? それに、どれくらい長いのかしら?
 もしも、途中で息が切れて、溺れてしまったら――」

「大丈夫。」女王は言った。「水面に、触れてごらんなさい!」

 星の娘と老人は、顔を見合わせた。

 すぐに、老人が前に進み出て、真っ暗に見える水面に手をひたした。

「おや!」彼は叫んだ。「これは水ではない。――お湯じゃ。ぬるま湯と言ったほうがよいかな。ちょうど気持ちがよいくらいの温度じゃ。」

 星の娘も進み出て、水面に手を触れてみると、確かにそれは人肌ほどの絶妙なあたたかさをもっていた。

「この水は、普通の水とは違います。」女王が言った。「この中では、溺れるということがありません。息ができるのですから。」

「水の中で?」

 星の娘は、驚いてきいた。

「ええ。」

「どうやって?」

「潜ったら、息を吐き切って、それから、思い切って吸い込めばいいの。」

 そんなことをしたら鼻がつんとなるし、それこそ溺れ死んでしまうわ、と星の娘は思ったが、それを口に出しては言わなかった。

「潜ったら、わしらは、どちらへ行けばよいのですかな? 下へ、それとも、横へ?」

「何もしなくてよいのです。流れが、あなたがたを運ぶでしょう。――さあ。」

 女王が腕を振って、暗い水面を示した。

「では、わしから行こう。」

 すでに覚悟を決めたように、老人が言って、水を満々と湛えたふちに足をかけた。

「おじいさま。」

 思わず、星の娘は引き留めようとしたが、それよりも早く老人の体はぐらりと前にのめり、ほとんど一回転するようにして、暗い水の中へはまり込んだ。

「おじいさま!」

 老人の姿は、まったく見えなくなった。

 浮かび上がってくることもなかった。

 星の娘はもはや女王をふりかえって見ることもせず、思い切り息を吸い込み、息を止め、一気にふちを踏み越えて水の中へと身を躍らせた。


 一瞬にして、あたたかい水が身体を包みこむ感覚があった。

 星の娘は真っ暗な水の中で必死にまぶたを開き、目を凝らしたが、自分の身につけた衣から湧き上がる無数の真珠のような泡の他には何も見えなかった。

(息ができない。)

 本能的な恐怖に襲われて身をもがいた星の娘は、急速な息苦しさが頂点に達したとき、堪え切れずに水を吸い込んでしまった。

(ああ、だめ、溺れて死ぬわ、――あら?)

 あたたかい水が鼻と喉を滑るように抜けていき、肺をいっぱいに満たし、口に溢れた。

 星の娘は、自分が、暗い水の中で呼吸をしていることに気付いた。

 ほとんど信じられない気分で、星の娘は縮めていた両手足をそっとのばしてみた。

 水中で重みを失った体は、まるで何もない闇の中に浮かんでいるかのように感じられた。

 しかし、宙に浮いているのとは違い、周囲すべてを水が取り巻いている感覚があり、それは不思議と安心感をもたらすものだった。

(沈んでいく――)

 小さな泡の粒が動いてゆく向きから、上下の区別はついた。

 手足を動かしてもいないのに、星の娘の体はぐんぐんと沈んでいた。

 まわりの水そのものが動いて、彼女の体を下へ下へと運んでいるようだった。

 それでも、不思議と怖くはなかった。

 星の娘は口から最後の空気の小さな泡の粒を吐き出し、力を抜いて、全身を水にゆだねた。

 まるで平和な夢を見ているように、穏やかで、安心しきった気分だった。

 やがて星の娘は、自分が流されている場所が、もはや広い暗闇の中ではなく、硝子でできたような、太く透明な管の中であることに気付いた。

 目を上げると、その長く太い管がゆるやかに曲がり、螺旋のように渦巻いたり、波打ったりしていながら闇の彼方へとのびていくのが、透明な壁ごしに透けて見えた。

 やがて、闇の中に、いろいろなものがぼんやりと浮かび上がって見えはじめた。

 それは、はじめは白っぽいもやか、砂粒の集まりのようにしか見えなかった。

 それが闇のあちこちにあって、宇宙に似ていた。

 それらはやがて、無数の小さな生き物のかたちになり、闇のあちこちに、静かに漂っていた。

 泳ぐもの、這うもの、飛ぶもの――

 どういう性質のものかよく分からない、奇妙な姿をしたものたちもたくさんいた。

 とびはねるもの、走るもの――

 声のないもの、その身を打ち鳴らすもの、吠えるもの、笑うもの――

 生き物たちの姿はどんどん多様に、複雑になり、それらがみな眠っているようにじっと浮かんでいた。

(命の海……)

 無限の闇をゆく管の中を漂いながら、星の娘は、ふとそんなことばを思った。

 いつのまにか、音が、聞こえていた。

 それは声でも音楽でもない、ずっと鳴り続けていたためにこれまでそうと気付かなかった、ただひとつの途切れることのない音だった。

 その音は周囲に広がる闇とひとつのものであり、闇に果てがないのと同じように、その音にもまた終わりはなかった。

 星の娘は、本当の無限というものを全身で感じ取ったのはこれが初めてだった。

 おそろしさや感激などという名をつけることのできない、原始的な感覚が彼女をつらぬき、彼女は泣き、その涙は彼女を包む水にとけた。

 彼女を運ぶ管が、白い光に包まれ、彼女は顔を両手でおおった。


 長い時間が経ってから、星の娘は、そっと自分の手を顔の前からどけた。

 そして、自分はどこの遺跡に迷い込んだのだろうかと思った。

 彼女はいつのまにか、髪からぽたぽたとしずくを垂らしながら、浅い池の中にひざまずいていた。

 その池は、鈍い銅色に光るタイルにかこまれ、ひとつひとつのタイルに、何かの物語をあらわす模様が線で彫られ、ところどころには色もついていた。

 その彫刻は彼女が膝をついている浅い池の底にも、びっしりとほどこされていた。

 彼女は立ち上がり、見上げた。

 彼女がいるのは、灰色の床に、砂色の壁の細長い部屋だった。

 あたりがとても明るいのは、砂色の壁が右側にしかなく、左側は、床と同じ灰色をしたアーチ型の門が、縦にも横にも幾列も並んで、大きな格子のようになっているからだった。

 アーチの向こうはすべて、青い空だった。

 部屋の天井は恐ろしく高く、見上げても見えないくらいだった。

 そして、彼女の前にはいつのまにか、砂色の岩でできた、天井と同じくらい高くまでのびる階段があった。


 星の娘は、迷わず池から踏み出し、その階段をのぼっていった。

 濡れた衣のすそが階段にこすれ、跡を残した。

 右手の壁には、池にあったのと同じような、ただしそれよりももっと大きな、物語のレリーフがほどこされていた。

 レリーフは壁の全面にほどこされているようだったが、星の娘は、せいぜい自分の背丈の高さの二倍あたりにあるものまでしか、はっきりと見て取ることはできなかった。

 戦いの様子や、花々、鳥たち、姫君たち、魔女たち、川、風、竜――

 その表面に手で触れると、それがどういう物語なのか分かった。

 そこには、かつて庭の王国で起きた出来事、一の女王と呼ばれた少女が、ときにはひとりで、ときには妹と共に、この国を歩いた頃のことが記されていた。

 緑色の竜の物語、大嵐ッ子が遊びに来たこと、高い樹の上に天文台が築かれたこと――

 ウォラウォラ鳥の襲撃、仕立屋マーサの物語、夜の王の騎士たちの物語――

 魔女の庭に薬草園が作られたこと、真珠とり、オニユリの祖母の結婚、軍病院の建設、春には娘たちが花びらを金の糸でかがってドレスを作ったこと――

 文字に書かれず、誰に語られることもなかった無数の物語たちが、この壁にすべて彫り込まれ、記録され、永久にここにある。

 星の娘は、壁に触れながら、のぼり続けた。


 やがて、物語は彼女たち自身のことにまで及んだ。

 かつてこの国を旅立った一の女王のかわりに、長い時を経て、ふたりの旅人が庭の王国に来たこと。

 ふたりが王国の衛兵たちに出会い、砂漠の魔女に会い、オニユリと若者に出会い、軍病院の炎喰いの女性たちに出会ったこと。

 二頭の馬たちにおくられて〈流れたり流れなかったりする川〉にたどりつき、番人の男の子と大がえるのゲールに出会い、ケンタウロスたち、幼い女の子を抱いた母親と男の子、旅人に出会ったこと。

 あぶないところで全員が川を渡り、オニユリの茶屋へ行き、白オオカミの〈雪の王〉や鳥の魔女と出会い、小屋を借りて眠ったこと。

 翌朝、太陽が昇ったとき、翼の騎士たちが飛んできたこと。

 エレクトラ隊長と騎士たちとともに風祭の準備をし、夜には人々といっしょに踊りまくったこと。

 湖の妖精に惹かれた若者を追って、老人が林の奥に迷い込み、そこでオニユリの祖母に助けられたこと。

 オニユリの祖母におくられて、影の森を抜け、鎧を着た獣たちの爪をすり抜けて、湖の妖精たちのもとへ辿り着いたこと。

 妖精の娘が身を挺して星の娘を夜の王の手から救い、ふたりがようやく薔薇の城へと辿り着いたこと――


 星の娘はかすかな痛みを感じたように顔をしかめたが、足を止めることはなく、そのままのぼり続けた。

 レリーフは、薔薇の城での出会いを語り、それに続く日々の出来事を語った。

 そしてとうとう、ふたりが帰ることを思い出し、暗いトンネルを通り、あたたかく暗い水に飛び込み、命の海の中を通り抜けて、この長い階段を上ってゆくところまで来た。

(ああ、何もかも、すっかり書いてあったわ。――でも、この先は、いったいどう書かれることになるのかしら?)

 ちょうどそのとき、目の前に階段の終わりが見えた。

 暗い天井に、そこだけ四角く穴があいていて、その向こうは眩しくて何も見えなかった。

 星の娘は、細めた目の上に手をかざしながら、その穴を通り抜けて上がっていった。



   【庭の王国への旅44へと続く

必殺!(←殺すな) 私信返し!!

2015年12月26日 20:26

 今回は、すっかり私信返しの回となっております☆


>エレファーナさま

 お疲れ様です!
 当日、もしかしたらお時間あいてないかな? と思い、メールしようとしたのですが、連絡がつかず……!
 わたくしだけzayoさまとエンジョイしてしまって、何だかすみません(笑)
 下記事に書いた通り、めちゃくちゃオモロイ出来事がありました……

「シュッとしてる」って、言いますよね!
 わたくしの大阪シュッとしてる計画は、ニイちゃんたちのテロにより残念ながら撃沈しましたが(汗) 今度もまた機会があれば、計画の第2弾を実行しようと思うアウローラでした!(←フォロー不可能な出来事にも関わらず懲りてないアウローラであった)
 その際には、ぜひエレファーナさまたちもご一緒に……!
 こちらから北海道へ遊びに行く! というのも、いつか、実現したい夢です。


>zayoさま

 お疲れ様でした。無事のお帰り、何よりです!
 記事、拝見いたしました~☆
 あの、瓶詰めの重さにより(?)茫洋とした状態のアウローラを、素敵なイラストにしてくださってありがとうございました☆
 北海道土産のごちそうは、むっしゃむっしゃといただきまくっております(拝) 美味し!!
 zayoさまイチオシの「ルイベ」は、まだ食べてないのですが、食べたらぜひ「食レポ」させていただきたいと思います!
 
 そして……例のニイちゃんたちの思い出は、大阪のダークサイドとして永遠に封印しておいて下さい(笑)
 他地域の人の前では必要以上にボケてしまう、これが、大阪人の悪いクセなんや!(←そうではない人も無論いますが……)
 
 二日目以降に、どんな出来事があったのか、これからの記事も楽しみに待たせていただきます☆
 

 さて、zayoさまは「まだ秋みたいですね~☆ 木に葉っぱがあるじゃないですか!」と仰っていたこの辺りも、めっきり寒くなって参りました。
 皆さま、風邪などひかれぬよう、あたたかくしてお過ごしくださいませ!

 下記事に拍手、ありがとうございました(拝)

 また次回の記事で、お目にかかりましょう~!!

大阪? 海? ベトナム?

2015年12月20日 21:49

 本日は、なんと久々にzayoさまにお目にかかることができました!

 ブログでも書いておられる通り、北海道から、家族旅行で大阪へいらっしゃったのです。
 
 飛び込み的に「当日あいてるんでご案内しましょうか!?」と申し上げたところ、ご一緒していただけることになりました~!

 大阪組の皆さまにも、声をかけたかったのですが、うまく連絡がつかず、二人行動ということに。

 神社に行ったり、焼き物を見たり、海遊館に行ったりと、充実した一日となりました……!

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 海遊館(水族館)のクラゲと、分かり辛いですが、岩のあいだにはさまっているアザラシ……

 そして夕飯にはベトナム料理と、大阪感があまりない感じに(笑)


 そもそも今回、わたくしは、ある目標をもってzayoさまをご案内しようと考えておりました。

 大阪といえば、他県の方からは、なんとなく「ずうずうしい」「グイグイ系」「ガラが悪い」「笑い第一」みたいな――まあどれも否定はできない――イメージで見られているのではないだろうか?

 今回は、おしゃれで静かなところ癒されるところを中心にご案内して、大阪もけっこうシュッとしてる(←大阪弁ですっきりしている?褒め言葉)やないかと、こう思っていただきたかったわけです。

 が!!

 海遊館からの電車移動中、酔っ払いのニイちゃんたちが、あろうことか、zayoさまになれなれしく絡んだ末、謎の男×男ショーを披露するという暴挙に――

 マジです。

 作り、仕込み一切なし、100%リアルガチの出来事です。

 ニイちゃんら、私の「大阪シュッとしてる計画」をブチ壊すなやああああ!

 zayoさまは本気で笑神様の御加護を受けておられると思うと同時に、すごく恥ずかしかったアウローラでした。

 その恥ずかしさは、子連れのママ友どうしがお洒落なカフェでランチをしている最中、自分の子どもが、いきなり下品なギャグを飛ばしてぎゃはぎゃはと騒ぎ出したときのいたたまれなさにも匹敵したでしょう――

 ニイちゃん、ここは公共の場や……そして特に今はアカン……!

 zayoさまは「凄く楽しいですね大阪~☆ フフフ」と喜んで(?)くださったので、まだ救われましたが……

 これまでの人生、長く地下鉄に乗ってきましたが、車内で男×男ショーを繰り広げるニイちゃんは初めて見ました。

 zayoさま……絶対に「持って」らっしゃる……!

 きっと、芸人さんが泣いて欲しがる「笑いの星」のもとにお生まれになったのでしょう……

 いろいろな紆余曲折(……)はあったものの、楽しき一日となりました!!

 zayoさま、一日お付き合いいただき、本当にありがとうございました~!(拝)


 皆さま、zayoさまも北海道に戻られてからブログに記事をアップすると仰っていたので、詳しくは、ぜひ、そちらもどうぞ。

 

 下記事に拍手、ありがとうございました!!(拝)

 また次回の記事で、お目にかかりましょう~!

庭の王国の旅 42

2015年12月17日 19:42



 *    *    *     *    *


 どれほどのあいだ、そうやって過ごしていたのか、分からない。

 ある朝、星の娘はいつものように朝食をとり、その日の絵を全部見て回り、それから大温室にやってきた。

 はだしで、みずみずしくすべすべとした草の感触を楽しみながら歩いていた星の娘は、ふと、足先にひとつの草花を見つけて、立ち止まった。

 すみれの花が咲いていた。

 星の娘は草の上に両膝と両手をついて、小さな紫色の花に顔を近づけ、その香りをかいだ。
 
 そしてあらためて花の色を見たとき、不意にまどろみから醒めるように、星の娘は、思い出した。
 
 すみれの花と同じ色の、ボリジの花の砂糖漬けのこと。

 そして、それを届けるべき相手のことを。

「アウローラさん。」

 星の娘は呟き、しばらく呆然と膝立ちの姿勢でいた。

 ここに来てから、何日、経ったのだろう。

 あまりにも長い間、なすべきことを忘れ去っていたという気がした。

 ここがあまりにも心地好いものだから、帰るということを忘れていたのだ。

「アストライアくん。」

 急に背後から呼ばれて、星の娘ははっとして振り向いた。

 そして彼女は初めて、大温室で、老人の姿を見た。
 
 彼は、星の娘と同じ表情をしていた。

「今は、何日じゃろうか?」

「分かりませんわ。」

 星の娘は裾をはらって立ち上がった。

「あたくしたち、ずいぶん長い間、こちらにお世話になりましたわね。日を数えることも、忘れてしまうくらい。
 ――おじいさま、まだ、あれをお持ち?」

 星の娘がゆったりとした衣の胸に手を当てて言うと、老人はうなずき、青紫色の小箱を取り出した。

「早いとこ、これをアウローラくんに持って帰ってやらねばな。」

「ええ。あたくしたち、少しぼんやりしすぎましたわ。帰らなくては。」

「もうですか?」

 悲しげな声が聞こえて、二人は同時にそちらを向いた。

 草の上に、仮面の男が立っていて、仮面越しにもはっきりと分かるほど気落ちした様子でこちらを見ていた。

「ずっと、ここにいらっしゃればよいではありませんか。
 この城は素晴らしいでしょう? 一の女王陛下がお望みになった通りにできているのですよ。
 美しく、静かで、心穏やかに過ごすことができる――」

 彼は、大きく振った両腕を、力なく下げた。

「それとも、私の仕事ぶりにご不満でしたでしょうか?」

「いいや、あなたの仕事ぶりは、完璧でしたぞ。」

 老人は言い、仮面の男に歩み寄って、その腕を軽く叩いた。

「あなたのおかげで、わしらはこの上なく気持ちよく滞在することができました。本当にありがとう。
 だが、わしらは、もう行かねばならぬのです。」

「外の世界など、つまらないですよ!」

 仮面の男は叫んだ。

「くだらないことで煩わされて、しなければならないことばかりで――
 ここのように美しいものも、素晴らしいものもないのに!」

「そうでしょうとも。」

 老人は言った。

「ここよりも良いところがあるなどとは、わしには思えぬ。
 ちょうど一日のうちで、あたたかい毛布にくるまって完全に目覚める直前の一瞬、気持ちの良いまどろみの中に漂っているときが一番いいのと同じようにな。
 だが、わしらは、そこから出ていかなければならん。
 いかに心地好くとも、人は、いつまでも眠っているということはできないのじゃから。」

「あたくしだって、帰りたいとは思いませんわ。」

 老人のとなりから、星の娘も言った。

「こんな素晴らしいところ、決して、よそにはありませんもの。
 あたくしたちは、帰りたいのではなくて、帰らなくてはならないの。
 あたくしたちは、物語を語る者。ここのことを語るためには、ここに来て、そして、帰らなくては。」

「あなた方にも、とうとう、時が来たのですね。」

 三人は同時に振り向き、草の上に、青い髪の女王が立って微笑んでいるのを見出した。

「あの子も、かつて、ここから去っていった。
 あの子にもまた、しなくてはならないことがあったから。
 人が物語の世界に入るのは、そこで力を得て、そこから出ていき、もう一度、外の世界を歩くためです。
 あなたがたはここを去ってゆくけれど、心の中に、ここでの記憶を持ち続けるでしょう。
 その記憶が、困難な時にもあなたがたを支え、あなたがたを救うかもしれない。
 そして、いつか地上でのあなたがたの時が尽きるとき、そのときには、あなたがたは、再びここに戻ってくることもできるのです。
 もしも、あなたがたがそう望むのならば。
 人はみな、最後の瞬間には、自分が信じた物語の中に帰ってゆくのですから。」

 老人は頷いた。

「わしは、いつか、ここに戻るでしょう。アウローラくんが愛した、この国に。
 そして、幼い頃の彼女が出会った、たくさんの人々と、再びことばを交わすでしょう。」

 星の娘も頷いた。

「あたくしも、戻りますわ。その時が来れば、きっと。
 そして、あたくしはこの大温室で、一日中美しい花々を見て、夜には星を見て――
 そして、あなたが淹れてくれた、美味しいお茶を飲みますわ。」

 星の娘は、最後のことばを、仮面の男に向かって心を込めて言った。

 彼は、すぐそばで悲しい顔をして突っ立っていたが、星の娘のことばを聞くと、笑おうとするように口元を曲げた。

「それでは、」女王は言い、衣のすそをひるがえした。「ついておいでなさい!」



庭の王国への旅43へと続く

お久しぶりでございます!

2015年12月13日 10:08

 もちろん生きておりました☆

 やはり「発信する」場所が2か所あるだけで、一方がおろそかになってしまいますね……(汗)(←外部の小説投稿サイトで季節限定企画に挑戦していた)

 しかし、そのおかげで、新しい短編の物語がひとつ完結いたしました!

『ヒュルムンデルの雪の女王と、桃ノ花村のこどもたち』

 昔、書こうとして、真ん中だけ確定し切らずにウエーブが止まってしまい、中途半端な状態が嫌だったのか、全消ししてしまったという伝説の作品!

 このたび、事象の地平の彼方からよみがえり、以前よりも(多分)バージョンアップして、無事によみがえって参りました☆

 企画ページにて、すでに作品公開が行われている状態であれば、個人サイトやブログでの掲載もOKとのことです。

 この記事の追記に展示した後、時空跳躍ゲートからも、扉を開いておきますね!


 それでは、今日のところはこのへんで。

 年末のアレコレで忙しいですが、皆さまもお身体大切に……!

 下記事に拍手、ありがとうございました!!(拝)

 ↓ 物語の時空へは、追記からどうぞ~  ↓
 
 
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12月になってた!?

2015年12月06日 12:03

 年末へ向けての業務のあれこれと、名探偵ポワロのドラマ視聴と、外部サイトへの展示作業に邁進していたら、日誌の更新がおろそかになっておりました……(爆)

 ちなみに下記事の少年とは、あれから遭遇しておりません。無念!

 そして上で申しております名探偵ポワロのドラマは、以前に一挙放送をしていた全70話分を、全部録画しておいたものです。

 1日1話観ても、全部観るのに2ヶ月以上かかるぞ!

 すでにどの話も3回以上観たことがあるのですが、小道具や当時のファッションの演出がものすごく凝っていたり、伏線の張り具合を確かめる面白さがあったりということで、ついついまた観てしまいます。

 ポワロは、小さい頃に見ても何も面白くなかったと思う(現に昔は圧倒的にホームズ先生のほうが好きだった)のですが、大人になってくると、どの話も「ああ、あるよね~……」という感じで、しみじみします!
 
 
 さて、創作のほうはどうなっとるのかと申しますと、童話風の新しい短編が、5000字近くまで進んでおります。

 近いうちに――まあ今年中には、展示ができるのではないかと思っておりますよ。

 謎の老人氏とアストライアさんも、年が改まるまでには帰ってきていただきたいものです……(汗)

  
 は! そして全然関係ない宣伝ですが、物語の同志エウロスさんこと蝉川夏哉さんが、新しい本を出版しました☆

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『異世界居酒屋「のぶ」 4杯目』 

 シリーズ累計12万部とはやるじゃないか!!

 美味しそう、かつ面白いので、ネットや本屋で見かけられましたら、ぜひぜひ読んでみてくださいね☆


 それでは、本日のところはこのへんで!

 下記事に拍手、ありがとうございました☆(拝)
 
 また次回の記事で、お目にかかりましょう~!!  



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